SOUND ALIVE presents 横浜合同演奏会
今年の初めに東京に戻り、春からは仕事を始めた。
会社で働くのが久しぶりなら、満員電車も夕方の保育園のお迎えからの慌ただしい生活も久しぶりで、あっという間に日々が過ぎていく。
気付けばすっかり音楽を聴く時間がなくなってしまった。通勤時間は電車で音楽に浸れる程長くなく、家に帰れば子供達にその機会を奪われ叶わず。
ASKAさんの音楽もあまり聴けていないし、ブログもそんなに頻繁に見られていない。
ASKAさん、元気にしているかなぁ。
ふと思った時に、重要な予定を思い出した。
ASKAさんが出演するライブに行くんだった。今週末だ!
発売日の夜遅く、たまたまASKAさんのブログを開いてチケット発売に気付き、リセールチケットを購入したのだった。
当日もなんだかばたばたと会場に向かったけれど、終わってみれば、幸せな非日常のひと時を過ごせたことに、感謝の気持ちで満たされた。
その夜の記憶。正確ではないかもしれないけれど、熱気冷めやらぬ内に書き留めた言葉たち。
♫2019年9月16日 パシフィコ横浜
SOUND ALIVE presents 横浜合同演奏会
[出演]スターダスト・レビュー / 杉山清貴 / KAN
[ゲスト]ASKA
[オープニングアクト]海蔵亮太
三連休の最終日。日中子供達を連れて出かけ、午後、じゃあねと家を出る。わーいライブだ。
東急線を乗り継いで横浜へ。横浜のこの開放感、いつ来ても好きだな。
会場に到着して席に着くと、近くの女性客達が何やら話しているのが耳に入ってくる。どうやらスタレビのファンの方達の様子。
やれジュリーは太った、元アイドルの誰々がこの間歌ってたけど太った上に歌も歌えてなかった、でもピンクレディーは変わらずですごかった云々。へー、そうなんだ。
ひとしきり喋り終えた後、しばしの間をおいて女性のひとりが言った。
「そしてASKAはどうなんでしょうね。ちゃんと歌えるんだろうか」
なんて意味深なコメント。何故かちょっとどきどきする私。
開演時間の17:30になり間もなく会場が暗転し、オープニングアクトの海蔵亮太さんが登場。
チラシによると、カラオケ世界大会優勝という経歴を持つらしい。
今日は色々、初めて聴く人達の歌がたくさんだなぁと気楽に座って聴いていたのだけれど、しっとり歌い上げる姿に思いの外ぐっときてしまった。
想いを表現できる、そしてそれを聴き手と共有できるって素晴らしい。その境目はどこにあるのだろう。
前座終了後、しばらくの準備時間を経て、ぞろぞろとメンバーが登場してきた。
誰が誰だかよく分からないよー、とオペラグラスで一人ずつ追っていたら、「全員いるね、ASKA以外。」 という声が聞こえてきたのでそうなのかと納得。
スタレビを生で観るのはこの日が初めてだったのだけれど、要さん、面白すぎる。
「お手間ではあるんですが、良かったら席をお立ちください。 椅子代返してくれって言われちゃうと困るんですけど、まあそこはご自由に。でも空気は読んだ方がいいと思いますよ。 あくまでこれは自律的に、強制されてやるものではないですから。さあではみなさん、ルールに従って立ちましょう!」
終始こんな感じでおふざけしながら進行していく。
初めて聴く生歌は、思いのほか素敵な歌声だ。いいね~と思いながら聴いていたら、突如要さんが、KANさんが弾くグランドピアノの上に登り出した。
下からはスモークがブワーっと顔めがけて吹き付ける。要さん構わず熱唱、観客は大爆笑。なんだこのおじさまは。
しかしこれだけでは終わらなかった。その後の曲でもまたピアノの上に立ち、今度は大きな赤いマントを背中に付けだした。
何が可笑しいって、マントをパタパタと操っている後ろの男性スタッフがものすごい真剣な表情なところ。
目の前のKANも何食わぬ顔でピアノを弾きながら歌っている。シュールだ。
こんなにおふざけしてノリノリなテンションで、ASKAさんは一体どうやって登場するのだろうと気になり出した。
そのうちに要さんが、さあみなさんでオリンピックを応援しましょうと言って振り付け指導が始まった。
メンバーが音楽に合わせてマラソン、卓球、ボルダリングなどの動きを模した振り付けをして、私達観客がそれを真似する。笑える、なんだこれ。何度も繰り返して、最後はリレーの姿勢に。
次の瞬間、ステージ横の袖から颯爽と男性が走って来た。ってあれASKAさんだ!
ネイビーのTシャツに、白に近いグレーのパンツという爽やかな装い。アンカーでバトンを受け取ると、あっという間に走り去ってしまった。
「誰か走ってたよねー?」と要さん。
意外に会場無反応。あれ、みんな気付かなかったかしら。
その後も何事もなかったかのように続き、しばらくして要さんが、今日のスペシャルゲストです!謎のランナー! と紹介してASKAさん、再び登場。
「えー、さっきのASKAだったんだー!」という声が聞こえる。
同時に冒頭の女性客がこう言った。
「痩せてない!」
えーそうかな?かなり引き締まって見えたのだけど、私には!でも身体を相当作り込んでいるのか、がっしりとした印象。それにしてもASKAさん、若いなー。
ASKAさん登場早々、ステージに大きなホワイトボードが運ばれて来た。大きく「み・な・と」と書かれている。横浜にちなんだお題で、みなとから始まる言葉でメンバーを紹介する川柳を作るらしい。歌じゃないんだ。
ASKAさん「これってみ・な・ とのどれかから始まればいいって言う意味?」
要さん「…じゃあそういうルールにします?」
ASKAさん「どっちなんだよ!」
要さん「やめてよ。 今俺ほんとASKAと険悪な雰囲気みたく思われたくないんだよ」
会場笑。ちょっと苦笑い。
箱から一人ずつサインボールを取って、 引いた名前のメンバーを川柳で紹介することに。自分のボールを引いてしまった要さんは、ASKAさんとボールを交換する。
さぁ出来た人!と要さんが聞くと、ASKAさんが真っ先にはいはい!と手を挙げる。
「とんでもない なんとかしてくれ みみみのみ」
要のライブでの様子と言って説明するのだけど、「み」はなんだったけな?さっきまで覚えていたけど忘れた!! と言って会場を沸かせるASKAさん。
KANさんの番になり、やや恐縮気味に、ASKAさんを紹介することを打ち明ける。
これは本当の話なんですけど、と前置きして、一句。
「みるからに 長いメールが 途切れてる」
ASKAさんから長いメールをもらったが、どう見ても途中で途切れていたとのこと。
ASKAさん曰く、KANがフランスに行った時に何かあったのかなと思ってメールをした。お前は生まれながらの天才なんだからということを書いていた。でも何故か途中で途切れていた。何があったかは分からない。
「ま、そういう関係ってことよ!」とまとめる。
会場、笑いに包まれる。ASKAさん楽しそう。
最後は杉山さんの川柳。ちょっと正確に思い出せないのだけれど、みんなとの懐かしい思い出が遠くに流れていく、というような内容だった。
昔の出来事が上手く思い出せなくなってきたという話から、ポプコンの思い出話が始まった。
要さん「スタレビでポプコンに出て、予選で大都会を聴いてあぁもうだめだと思った」
ASKAさん「16回、17回のポプコンに出たけど俺も同じ経験してるよ。 円広志さんが夢想花で回って回ってーと歌ったのを聴いて、あぁこれはもうダメだって思ったね」
要さん、おもむろに「…ASKA昔、友達いたよね?」 とASKAさんの隣を指差す。
「お前なー!(観客を向いて)こいつはいつも俺に言うんですよ。今はこういう時だから、そういう冗談とか言うと誤解されたりするからやめとけって。お前が言ってどうするんだよ!」
客席からどっと笑いが沸く。友達かー。でも要さんのこの触れ具合、絶妙だな。あまりシリアスなのも、全く触れないのもあれだし。
その後、アカペラでDaydream believerを全員で歌う。
歌い出す瞬間にASKAさん「ハックション」→ みんなズッコケる → 立ち上がってもう一回歌い出す合図 → ASKAさん「ハックション」→ みんなズッコケる。
観客はもちろん大爆笑。ASKAさん、本当に楽しんでる。
客席から「昭和〜!あの転び方」という声が聞こえてきた。
あれはドリフだったのか。そうなんだ、知らなかった。
アカペラの後はメンバーがそれぞれの歌を歌い、次はASKAさんの歌というところになり、ASKAさんから一言。
「今日は色んなお客さんがいらっしゃると思うんです。それぞれ聴いてるアーティストがいて。初めて僕の歌を聴かれる方もいらっしゃると思うので、ご紹介ということで、この歌を歌わせて頂きたいと思います。……愛は勝つ」
そう来たかー‼︎ 会場どっと湧く。多分この夜一番の笑い。本当、、笑ったー。ASKAさんが歌うの聴いてみたかったけれど!
長い笑いがやっと収まり、そのままイントロが流れ出した。曲は、はじまりはいつも雨。おぉーという会場の反応。
やっとASKAさんの歌が聴けたよー。今日は歌も絶好調。しっとり聴かせて曲が終わる。
要さん「一緒に曲を作ったのはいつだったっけ、あれは2000年…代だよね?」
ASKAさん「そうそう2000年代」
要さん「あの時僕たちのライブにスペシャルゲストで参加してくれたんです」
ASKAさん「四国だったよね」
要さん「そこで僕らが新曲をやりますって言って、SAY YES、って紹介したらお客さんは最初フーンていう感じであまり反応がなかった。でもいざ二人が出てきたら、ウワーーーってすごい盛り上がってさ! あれ絶対僕らのお客さんじゃないよねって。」
要さんがASKAさんの次の曲紹介の前振りをする。
「今日はCHAGEがいっぱいいますから。 あっちにもこっちにもCHAGE。」
わ、CHAGEって言った。さっきは友達だったけど。観客、またしても笑いが止まらない。
そして流れて来たイントロはSAY YES。わぁすごい。
CHAGEちゃんパートをみんながハモってる。なんていうか、圧巻な光景だ。
はじまりはいつも雨と来てSAY YES。昔のASKAさんだったらこういう選曲はしなかったかもなぁと思った。
円熟と潔さを感じて、嬉しさと切なさが入り混じってくる。あと何回こうやって聴けるんだろうなって思ったらちょっと泣けてきた。
拍手喝采で歌い終える。涙出ちゃったよー。ねぇちゃんと歌えてるでしょASKAさん、と件の女性に心の中で語りかけた。
すると曲が終わって間髪入れず女性が一言、
「YAH YAH YAHやってくれないかなぁ」
同伴の女性「そうだよね、やってくれたらいいよねー!」
なるほどー。ですよねー。
女性の期待を裏切り、ASKAさんは詩の朗読を始めた。
こういう場で、これを出来てしまう、観客を持っていけてしまうASKAさんて、やっぱりすごいなぁと思う。
「歌になりたい」
3月の静岡公演で初めて聴いて、素敵だなぁと思った曲。 時間を超えて、遠くに届く歌。
歌い続けてくれて、本当にありがとう。
会場いっぱいに温かな拍手が広がった。
この後ASKAさんは一旦退場し、後半で再び登場。
「晴天を誉めるなら夕暮れを待て」のイントロが流れる。私の斜め前にいた女性は多分スタレビのファンだったと思うけど、熱烈に拳を上げていた。音楽の力って計り知れない。
曲の終わりに差し替かり、ASKAさんもグランドピアノに上がって歌い出だした。
ASKAさんがピアノの上に立つと、面白いっていうよりふつうにカッコよく決まっちゃうよねー、なんて思っていたら、 曲の終わりに合わせて片手をピアノについて華麗に回転し、見事に着地…ではなく尻もち。
あれは見事な演出なはず、と思い込む。
そしてアンコールでは「YAH YAH YAH」。
観客総立ちで拳を振り上げる。
そうそう、この景色。マッキーのライブでも味わった感覚。 あの時代を共有したみんなと、繋がっている感覚。これって本当、感動的だ。
件の女性もきっと、楽しんでくれたはず。
それにしても、メンバーのCHAGE役コーラスに感動する一方でうすうす思っていたのだけど、CHAGEちゃんのコーラスワークってめちゃくちゃ凄かったんだ 。
あの高さでハーモニーを奏でるって尋常ではないことなのね! と、ご本人不在にして今更ながらに感心してしまった。
いつかまたお友達になれるかしら。
アンコールが終わり、要さんが「最後に一言頂けますか」 と各出演者に聞いていく。
KANさん「今日はもうずっと緊張してまして…」
要さん「なんで?」
KANさん「 いやもうはじまりはいつも雨は僕にとって特別な曲ですから、それをASKAさんと一緒にやれるとは。しかも僕がその曲のカウントを入れると言う。…がんばりました(お辞儀)」
背中に白い羽を付けてお茶目な格好をしているのに、なんでずっと浮かない表情で歌っているのかしらと思っていたのだけど(あるいはいつもそう見えるのか分からないけど) 、緊張していたのかー。
続いてASKAさん。
ASKAさん「今日の話っていつもらったんだっけ、 結構早かったよね?」
要さん「おとといだよ」
ASKAさん「違うだろ!結構早い時に話をもらって、もう、すぐ出るって返事をしたんですよ。それで今度は北海道でもやるんだよね。大黒摩季ちゃんも一緒に。 そこでは俺はスペシャルゲストではないんだよね。その違いがよく分からないんだけど。扱いの違いが」
要さん「いや色々あるんだって。この人簡単に言いますけどね、出てもらうのもそう簡単じゃないんですよ。色々事情が」
ASKAさん「俺の事情か!お前の電話一本だっただろうが!」
要「まぁ音楽やってると色々ありますからねぇ」
ASKAさん「お前がまとめるな、お前がまとめるな!」
ASKAさん「…頑張りました!」
———
ライブ終了。
こんなに笑えるライブだったなんて。楽しかったなー。なによりASKAさんが楽しんでいる姿を見られて嬉しかった。素敵な仲間に囲まれて音楽をやれるって最高だろうな。
公演後、道すがら聞こえて来るお客さんの話がまた面白い。 普段ASKAさんの歌を聴いていないであろう人達の新鮮なコメント。
「ASKA大きい。 ASKAの横にいると要さんがちっちゃく見える。」
確かに。お茶目でかわいいおじさまだったな、要さん。
「 ASKAさんがマイクの方全然見ないで歌うって本当だったんだー 。モノマネの人達がやってるのって誇張じゃなかったんだね。でもあんなにマイクから離れててあの声量すごいよねー! どんだけ声量あるんだろうね」
今更すぎて面白いー‼︎
「ASKAさん怪我してないか心配。おしりから行ってたと思うんだけど、あれ痛いよねー。 KANちゃんがあわてて心配そうに駆け寄ってたもんね」
え、あれ演技じゃなかったんだ⁈ そうなのかな、どうだったんだろう。
上と同じ方「あの曲(恐らくは共作の曲)歌って欲しかったけど、まあたくさん(人が)出てたからしょうがないよね。 KANちゃんのライブにゲストで出てくれないかなー。 むしろASKAさんのライブに出てほしい。でもそしたらライブしっかり見ておかなくちゃ。DVD発売禁止にでもなったら困る!」
発売禁止ってどういうこと。いやそれはないでしょー、と心の中で突っ込む。
「ASKAはあんまり触れられたくないみたいだったね。何があったんだろうねぇ」
しんみり語り合う女性二人組。
そうだなぁ。私にも分からないなぁ。
でも何であっても、ASKAさんが選んだ道は、きっとそれで良かったのだと思う。
ASKAさんが、自分のために歌を歌う。
伝わって来たら、それが答えなんだろうな。